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ジェシカはまず、南アフリカの紙幣である10ランド札を見せて、
「これは何ですか」と問いかけました。 会場にいた私たちはやや躊躇しながら答えました。 「10ランドです」 ジェシカはそれを聞いて、小さく頷き、そのお札を彼女の手で、くちゃくちゃにしました。そして、さらに問いかけました。 「このくちゃくちゃにされた10ランドは、“お金”としての価値を失いましたか」 私たちは、 「いいえ、全然……」 ジェシカは更にそのお札をもっとくちゃくちゃにして、さらに床に投げつけ、靴で踏みつけました。 「私の靴の下にあるこの10ランド、これで“お金”としての価値を失いましたか」 私たち全員が、彼女の言わんとしていることが痛いほど理解できたので、大きな声で彼女に答えました。 「何にも変わっていません」 この若く美しい女性はジェシカ・フォードさん、動物の大好きな20代の女性です。南アフリカのダーバンで生まれ、高校まで過ごしました。その後、お母さんの故郷である英国で仕事をしたりしましたが、「ダーバンがやっぱり大好き」と故郷に戻ってきました。 彼女の人生は2007年2月3日に大きく転換しました。 その日、彼女は彼女の父親と二人で、五匹の犬を連れて、家から5キロほど離れたダーバン近郊のショングウェニ・ダムというところに遊びに行きました。ちなみに、ここは我が家からもわずか10キロほど離れた場所にあります。 ジェシカの飼い始めた子犬たちにとって、この日が初めての水遊び。楽しい時間を過ごしたそうです。 でも、その時、5人の黒人の若い男性が近寄ってくるのを感じたので、犬たちを彼女の車に入れて場所をダムの反対側に移動したそうです。このとき感じた“嫌な感覚”をもっと信じて、その場を立ち去っていたら……、とは彼女が彼女のスピーチの中でつぶやいた、たったひとつの「後悔」でした。 この5人組は、この後、彼女と彼女のお父さんに背後から近寄り、金品を差し出すよう要求しました。彼らは拳銃とナイフで武装していたので、ジェシカたちは素直に要求に従い、車のキイも差し出しました。 その時、南アの他の多くの犯罪被害者と同じように、彼らは、「ああ、よかった。モノを盗まれただけで」と安堵したと言いました。 が、犯人たちは、車の操作を確認した後ですぐ彼らの元に戻ってきたのです。 そのあとのことも、彼女はかなり細部に渡り、私たちに話してくれました。彼女の父親は彼女からわずか1メートルのところで足と腕を縛られ、彼女が5人の犯人に代わる代わるレイプされる様子を無理やり見せられたのです。 喉に銃とナイフを突き付けられた状態で、どんな抵抗ができるでしょう。どんな反撃ができるでしょう。 彼女の話を聞きながら、目の前のこの女性とその父親の過ごした地獄をどんな言葉で表現すればいいのだ、と音が出るほど自分の歯を軋みました。 彼女はこのときの体験をこうして多くの場に出向き話します。 どうしてでしょう。 それは、彼女がこうやって公の場で彼女の体験を語ることで、彼女自身がレイプの被害者から、生還者への確かな変革を成し遂げていることを示し、それをして他の被害者への励まし似したい、と熱望しているからなのです。彼女は彼女だけがこういったレイプの被害者でない、ということを誰よりも知っているからです。 南アでは、2009年現在、17秒に一回、女性がレイプされているという統計があります。そしてこの数字は表面化したものだけです。ということは、警察にも誰にも言うことができずに、その恐ろしさ、悔しさで泣いている女性がたくさんいる、ということです。 ジェシカは、こういったレイプなどの暴力の被害者をいまのような状況に置いておいてはいけない、という思いで自分のこの体験を語る活動を始めたのです。POWAR (Protect Our Women Against Rape―レイプから私たち女性を守ろう)という組織を自ら立ち上げたのです。多くの人の「いつ南アから移住するの?」といった質問には、「私はどこにも行かない、逃げ出さない」と言いながら。 彼女は、こういったレイプのあと、警察がどのように彼女を扱い、どのくらいつらい思いで警察の医務官の診療を受けなくてはいけなかったか、ということを彼女が実際に体験したことを元に聴衆に説明しました。 「レイプの被害者には何よりも安心できるシェルターが必要です。そのシェルターに駆け込むだけで、警察や医務官、カウンセラーが揃っていて、傷ついた身体と心をスタッフが親身に癒してくれる場所が絶対に必要です。私の役目はこのPOWARシェルターを作ること。ひとつ、ふたつ、と南ア中に増やしていきたい」 彼女のこの運動はまだ始まったばかりです。こういった施設を一つ立ち上げるまでには、4千万円ほどのお金が必要だそうです。この資金を集めるために、彼女はこういった会を開いたり、ゲスト講師として学校などに出向いたりし、彼女の体験を静かに話しているのです。 私はジェシカの話を聞いて、彼女の声をもっと多くの人に伝えたい、と思いました。 彼女は、レイプ被害者でも、他の暴力の被害者でも、とにかく、そういった被害にあったら、家族に、友人に、そして広く自分たちの住むコミュニティに正直に実際に会ったことを伝えていって、そこから広がる支援の声を、心をもっと広げていこう、とも訴えています。 彼女のシンプルな訴えに心が揺さぶられました。 「伝えていかななければ、人は知らないままでいる」 その通りです。 彼女は、 「一人でこういったことを抱え込んで、家族や友人からも自分を隔離していたら、いくら親しい友人でも、“一人になりたいんだから放っておこう”としておくかもしれない。でも、何に苦しんでいるかを人に伝えていたら、きっと、“一人にしておいて”という投げやりな態度を取っても、きっとそこに、“一緒に乗り越えようよ”と考えてくれる空気が生まれてくるのではないでしょうか」 と語りました。 また、冒頭のシーンでもご紹介したとおり、彼女はレイプされたことで自分が汚れたとか、人格が変わった、ということはまったくない、と強調して多くの人を勇気づけました。 「彼らは私の尊厳を傷つけることはできない。彼らにレイプされ、身体を傷つけられたけれど、傷は癒える、そして私の心は彼らに奪われることは一瞬もなかった」 もちろん、こういった経験をした後であれば、人に接すること事態に恐怖を覚える人もいるでしょう。当然のことです。ジェシカも事件後2週間は誰にも会えず、自分の部屋にこもっていた、と打ち明けてくれました。 ジェシカの話を聞いた次の日、日本で結婚を間近い控えた女性をレイプした加害者が懲役7年の判決を受けた、というインターネットの新聞記事に目が止まりました。そして、そのレイプ被害者がその事件の4日後に自殺していた、ということも。 私は、自分の命を絶ってしまったこの若い女性にこのジェシカの言葉を伝えてあげられなかった悔しさで胸が詰まりました。彼女の周りの人もどんなにか無念だったでしょう。その婚約者の方もどれだけの挫折感を味わったことか。 だからこそ、だからこそ、「人と人は言葉を介してつながっていく」という今更ながらの私の生き方の根幹を支える信念にもう一度向き合う気持ちになりました。 私は、言葉を教え、通訳をし、原稿を書きます。 それは、すべてが、「人と人は言葉を介してつながっていく」というコミュニケーションの大切さを伝えていくためだと思っています。 もしも、私のこの文章を読んで、「私も誰かに私の気持ちを聞いて欲しい」と思ったら、どうぞ近くの友達に、家族に勇気を持って話しかけてくださいね。そして、もしも、周りにいる人があまりにも近くて、自分の心を話すことを躊躇してしまうのであれば、どうぞ私にメールをください。私でよければあなたの心を聞かせてくださいね。 実は、現代人の私たちは、人に干渉することを控える、という分別を必要以上に身につけてしまったのかも知れない、とも思い始めているのです。 自分だけで抱え込まない、人に自分の心を伝えていく、そんなことがもうちょっと自由にできるようになれば、もっともっと生きていくのが楽しくなると思います。 最後に、ジェシカたちを襲った加害者は、全員が警察に逮捕され、裁判にかけられ現在懲役25年の刑を服役していることをご報告しておきます。 娘ショウコも2週間ほど前、友達5人でまだ明るい道を歩いていた
ときに4人組の武装した男性グループに襲われたのです。彼女 たちの場合は、カメラや携帯電話などを盗られただけでしたが、 身体を触られる、という暴力を受けました。今回の話を一緒に聞いて、 彼女も大に勇気づけられました。ジェシカの戦いをショウコも手伝う! と燃えていました。声を出す、自分一人で抱え込まない、を身近な 大切な人たちに広めていきましょう。
by yoshimuramineko
| 2009-06-15 14:06
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